オックスフォード便り 110 「湯豆腐」
2008年 10月 17日
今日、ロンドンでオークションが開かれた。かねてから欲しかった全集が出品された。何十年恋い焦がれた恋人である。
何年になるだろう、追い求めてから…。編集、造本どの面をとっても言うことはない。普及版で十分であると思っていたが、今回は特装版である。仕方がない。資金調達するしかあるまい。
普及版もぜんぜん見ないし、この辺が手の打ちどころかと思い、あるだけのお金を集めた。満を期して会場に乗り込んだ。いつもよりリージェント・ストリートが華やいでみえた。
ところが会場について、見回しても現物はどこにもない。係員に問い合わせたところ急遽、出品先のニューヨーク支店から「引下げ」願いが出たという。
直前に引くとは、あまりにもアンフェアなので声を荒げたところ、マイケル・ダグラスのような恰幅のいいのが「どうぞ、こちらへ」と言って、すごい部屋に入れられた。
いつもご贔屓に、というようなタメゴトをいうもので、さらに興奮したら、これが弊社のパンフレットです、と渡された表紙をみると、女の子がこちらを見ている。
毒を抜かれてしまい、説明を聞き引きさがることに。もう会場をみるのも嫌だったので、オックスフォードへの帰路につこうとピカデリーサーカスまで歩いた。
すると、通りかかった日本食材を売っている店がすごく繁盛している。どの商品も安い。日本のマーケットとまったく変わりはない。
こちらへ来て半年、豆腐を食べていなかったので、湯豆腐をしようとおもいたち、1丁買った。安い。枝豆、薄揚げ、納豆みんな買ってしまった。どれも1ポンド以下。まるでマンガの「孤独なグルメ」みたい。
そこでつくった湯どうふがこれ。美味しかった。全集が湯どうふに変わり、割りきれなかったが、ポン酢と鰹節の匂いにつつまれ、すべては湯気とともに消えていった。
by oxford-N
| 2008-10-17 05:12
| 古本