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古本とビールの日々


by oxford-N

オックスフォード便り 150 「110年の歳月」

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たまたま古い『タイムズ・リテラリィ・サップルメント』を読んでいたら、1981年の号で、「日本特集号」と遭遇した。

1981年、時あたかもロンドンでは大きな「江戸大美術展」が開催されていて、大相撲の巡業もあったと記憶している。
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この時の図録が古本屋でよく出ているが、感慨をもよおさせる。感慨と言っても1981年に対してではなく、このちょうど110年前のことである。

1872年、岩倉使節団が100余名の人数で、欧米を巡察していった。アメリカからイギリスリヴァプールに到着した日が、1872年8月17日のことであった。

その時の模様は『米欧回覧実記』に詳しく描かれている。岩波文庫でもっともよく売れる見聞記だという。

この『実記』を読んだ荷風は「失笑噴飯せしむるものあり」とかきしるし、かつて自分たちが迫害した外国人の国にわざわざ出かけていく、使節団の節操のなさを嘆いている。

これが昭和10年、1935年のことである。荷風は柳北に肩入れしていたからこのような非難めいた言葉になったのであろうが、まだ「幕末」が過去のことではなかったのである。

使節団から110年後、『タイムズ・リテラリィ・サップルメント』は、躍進する日本の「現在」をとらえている。驚異の目で日本経済が見られていた時期でもある。
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特集には、明治維新の是非、アーサー・ウエリーの翻訳についてサイデンステッカーが熱く語っている。また「江戸川乱歩」の系譜が丹念に紹介されている。

そのなかでも日本の新聞にも大きくニュースになったのが、「詩人エドモンド・ブランデン」にまつわる記事であった。(続く)
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by oxford-N | 2008-12-01 16:42 | 古本