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古本とビールの日々


by oxford-N

オックスフォード便り 199 「エドワード・トマス」

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このところエドワード・トマスの紀行文によく手が伸びる。トマスは詩人として今日では文学史にその名前をとどめている。

でも詩人として活躍したのは第1次大戦で戦死する少し前の間だけである。生涯の大部分は旅行記作家であった。

過ぎ去りし英国の面影を書かせたら彼の右に出るものはいまい。過去の文献をよく探索したうえで、「実地見分」をして筆にするから文章が生きている。

たとえばこの「イクニールド街道」。イングランド南部を貫くローマ人も通ったという大昔からある細い道である。

今日では絶好の散策コースになっていてトマスの本をガイドブックにして、歩く人も多い。「道」自体はそんない変貌してはいないからだ。

トマスは1週間かけてこの道を行くが、最初は原稿料欲しさに出かけてきたとかまったく気をそぐような愚痴ばかりを立てる。

だが、歩いていくうちに道の自然、歴史に目を見張り、読者も一体となってトマスとともに歩を進めていく。
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雪がとける頃、ゆっくりとこの道を歩いてみたいと思っている。
by oxford-N | 2009-02-09 21:53 | 古本