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古本とビールの日々


by oxford-N

オックスフォード便り 171 「一冊のパンフレット」

風邪が治らないので仕方なくこちらの風邪薬を服用した。「4時間ごとに2錠」と処方箋にある。これはいい。

でも、つづいて「誤って3錠飲んでしまったときにはすぐに医者に行くように」とある。よほど強烈なのだろう。

友人の病院勤めの人に聞いてみると、クリスマス以後、野戦病院のように風邪をひいた人で病院はごったがえしているという。
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熱があると活字は辛いので、写真の多い冊子に手が行く。最近、グレート・ウエスタン鉄道の車内誌が充実している。

最近号は「ピア特集」である。pierには桟橋、埠頭のほかに、「遊技場、遊歩桟橋」という意味もある。これはヴィクトリア朝文化に詳しくないとこぼれてしまう知識に入るだろう。

この記事は貴重な情報源となる。T.T先生の近著『都市は<博物館>』にも数ページにわたってピアの解説がある。このパンフレットはさらに詳しい。
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全盛時には海浜リゾートの象徴として、英国全土に100以上あったのだが、第2次世界大戦時に多くが破壊された。ドイツ軍が桟橋を伝い上陸してくると想定されたからである。

1979年、全英ピア協会が設立され、「桂冠詩人」が代表におさまっているところがイギリスらしい。それでも現在は50ほどのピアが往時の姿をとどめている。

ジョージ・オーウェルのエッセイのタイトルで有名なWigan Pierは、名前が実をともなわない「誤った名称」であり、正しくは「石炭積み出し所」とでもすべきであったと説明されている。

海辺の写真を眺めているとピアに佇んでいるような気持ちとなり、潮風が吹いてきたのか、風邪でぼんやりとした頭がすっきりしたようだ。
by oxford-N | 2009-01-06 19:02 | 日々の情景