古本とビールの日々


by oxford-N

オックスフォード便り 47  「物価」

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古書の値段を10ポンドだの30ポンドだのとよく書いているが、日本に居るものからすればもうひとつ実感がわかないから、「物価」について説明してほしいというメイルを何人かの人から頂いた。隔靴掻痒を解消せよ、というわけだ。

英語と日本語が厳密な相対関係にないように、「ポンド」と「円」の関係も実勢の換算率をかければ片づくものではないので、実例をあげて説明したい。日本経済を反映して、わが「円」はすこぶる弱い。山一証券の社長の泣き顔が世界を駆け巡って以来、「円」は泣きつづけている。

かつてロンドンには6,500人の日本人がいた。今は2000人台であるという。小、中学校を見ても日本人かと思えば、中国人ばかり。パリのシャンゼリゼ通りで豪勢にシャンパンを開け、牡蠣に舌鼓を打っている日本人がいると思い、聞こえてくる声に耳を傾ければ、中国人だったというような話しに事欠かない。

ここオックスフォードには日本人観光客はまず寄りつかない。コッツウォルドか湖水地方へ行ってしまう。オックスフォードで日本人観光客かと思えばほとんどは中国人観光客である。東京オリンピックのときの日本といっしょの光景がくりかえされている。

現在、1ポンドが215円前後で交換されているが、1年ほど前は250円以上であった。かつて、といっても10年ほど前だが、160円台を推移していたことを思うと今昔の感をぬぐえない。ポンドがドルに接近していった「よき時代」であった。

つい、「昔はよかった」と繰り言をもらしてしまう。銀行で日本円の交換は400ポンドまでというような制限すらあった。交換すればするほど「もうかった」。思えば強い「円」の時代があったのだ(過去形で語らなければならないところがこれまた辛い)。

さて愚痴はこれくらいにして、こちらのまず「食」事情を紹介しよう。明治の物価と平成の物価を比較するときによくつかわれる単位は「そば」の値段などが引き合いにだされる。「食」が日常性という具体的な意味をおびているからであろう。

「パン」はさすがに主食だけあって、安くておいしい。種類も豊富。野菜類はこちらの方が安い。肉類も圧倒的に安い。牛肉は日本人の好みとちがい、「霜降り」は敬遠され、限りなく赤身が好まれる。

マグロもそうである。魚の種類も豊富で、新鮮な「いか」がおいしい。でも「たこ」はまだ少数派か。ムール貝が人気である。1キロで2・5ポンドくらい。オランダの養殖物が多いのが安値の原因だろう。こちらでも「かに」は絶品。おおぶりの「伊勢海老」は2匹で10ポンドが相場。これも泣ける。

日本の「食」は何でもそろっている。インスタントラーメンも驚くほどのラインアップで、コンビニと何ら大差がない。値段は安いくらいである。「すき焼き」をつくろうとしてもすべて調達できる。「割りした」はどこのメーカーでなくてはいけない、というようなこだわりさえつけなければ、「糸こんにゃく」から「焼き豆腐」までそろう。うどん、そばの麺類も事欠かない。「そうめん」などはこちらの方が安くておいしいくらいだ。5束で75ペンス。

先日、日本人仲間が集まったとき、「納豆製造」について蘊蓄が飛び交った。まるで密造酒をつくるような熱の入れようだった。納豆菌は雑菌より強いか云々というような議論を口角泡を飛ばしてやっていることを思えば、強いてあげればないのは「納豆」くらいか。その「納豆」もロンドンまで出れば買えるという。

健康ブームを反映してか、日本食に人気がある。ついに回転寿司がオックスフォードにも上陸した。ただ日本のような「こだわり」をもとめてはいけない。寿司に似せようと努力している、「お寿司もどき」と思えば腹もたたないが、それにしては高すぎる。築地の一流店へ行くくらいの値段を覚悟しなくてはいけない。

回転寿司より以前から、ラーメンチェーンの「わがまま」もここで店を開いている。味は日本で開店したら間違いなく3日でつぶれるような味である。麺が伸びているとかそんな次元ではない。マクドナルドやケンタッキーフライドチキンは日本とほとんど変わらない価格だが、ポテトの量が多いというような付加価値があるのが「お得」か。

お腹がすいてきたので、イギリスの食についてはまた次回にご紹介しよう。ではごちそうさまでした。(N)
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by oxford-N | 2008-07-19 17:48