古本とビールの日々


by oxford-N

オックスフォード便り 122 「フランクフルト・ブックフェア 11」

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フランクフルト・ブックフェアの最終日は、うれしい投げ売りがあった。荷物が55キロにも膨れ上がってしまったのは、このバーゲンの賜物です。

展示してあった書籍をバーゲン・プライスで提供する。全点ではないが、かなりのブースでバーゲンが始まった。

新刊書では、どうしても欲しいものがあったので、飛んでいくと、残り3点しかない。急いで買ったのが、ロバート・ソーントンの『フローラの神殿』。安かった。
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もちろん現物は買えないから、リプリント版で我慢。オリジナルを忠実に復刻したもので、じつ精確に再現されている。

とにかく大きい!横60センチ縦80センチは十分にある。とも袋に図版が入っていて、別冊で解説冊子がついている。

ソーントンは医学生だったころ、たまたま植物学の講義を聞き、感動を覚えてしまう。ここで終わっていたら、いい趣味ですむところだが、忘れた頃に薬草学の講義を担当する羽目になる。「植物愛」が再燃してしまうわけだ。

悪いことは重なるもので(本来は何も「悪いこと」ではないのだが)、遺産が入り財産を自由にできる境遇をえる。湯水にように財産を使ってしまうソーントンを止めことができる者はだれもいない。

彼の野望はただひとつ、史上、最高の植物図譜を制作することであった。画家、彫り師、印刷技師すべて最高の人材を集めて開始した。何年もの歳月が流れた。

しかし歳月の重みは膨大な費用となって、ソーントンを蝕んでいった。
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1811年、借金を一度に清算すべく、国王が主宰する宝くじにかけてみることにした。一等賞に植物図譜の原画を、二等賞でも図版とテキストを賞品に提供し、胴元になった。

ソーントンは、宝くじ1枚2ギニーで、二〇〇〇〇枚のくじを発行した。だが、すべて裏目に出てしまい、さらに借金がかさみ、破滅へと。生涯では払いきれず、ふたりの子供も借財を背負わされたという(その苦労を思うと55キロくらいなんだ!)。

28葉の植物画はすべて擬人化されていて、寓意が込められている。だから本来の植物画ではない。それは植物のイメージを借りて、ソーントンの思想を盛り込もうとしたものであった。
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たとえば、この「恵みを大地にまく女神フローラ」。風の衣をまとい、水辺からあがってきたのか、その恵みを大地に撒き落としていく。手前から、ずっと丘にそって花が咲き乱れている。

中央の山奥深く、廃墟が見える。これぞピクチャレスクというわけである。全能の神、国王、自然を礼賛してやまない。(でも、重かった…)
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by oxford-N | 2008-10-24 17:07 | 古本