古本とビールの日々


by oxford-N

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友人宅にいる猫は、庭を縄張りとして、ワイ川狭しと、日々走りまわっている。そのネコ様に古本について問いかけてみた。

「ご主人も私も古本に熱中しているが、それって、どう思う?」
「思うも何も、本しか興味がないのに、他の選択肢などありえるわけがない」
「なるほど、でもどうしてこんなに古本が好きなのだろうと、時々、疑問が…」
「それは他の人とおしゃべりをしたいからではないのか」
「おしゃべり?」
「つまり自分と同じ考えを探ったり、またその考えがどのように発展しているかを知りたいからだろう」
「つまり同じムジナを探したいというわけか…」
「そうさ、ほかに何がある?」
「見ず知らず人の考えに耳を傾けることができるのも、本を通じてしかないか…」
「その通り!」
「ところでネコも本を読むのかい?」
「馬鹿にしちゃいけないよ。読書するほど落ちぶれてはいないよ!」
「……」
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そういってネコはワイ川のほうへ姿を消した。上流で降った雪のため、川は増水している。遠くで草を食んでいる羊の数を数えていたら、いつの間にかまどろみに落ちていっていた。
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by oxford-N | 2008-11-30 23:58 | 古本
古書店ブースから出て、少し歩くと時計台のまえに来る。あの広大な古書城ともに、この時計台は街のシンボルである。
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ブースの古書城が街を睥睨しているとするならば、この時計台は街の鼓動を刻んでいる。住人の生活はこの時計を中心に営まれているのだろうか。

映画館跡を買い取って開いた古書店シネマ・ブックショップは、ロンドンの古参フランシス・エドワードの店だけあって充実している。
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これでもかと店頭に均一台ならぬ、このように置くのだが、客寄せのつもりかもしれないが、普通の読書人ならば胸が痛いはずである。

連日雨の国にこのような陳列は似合わない。晴れわたったカルフォルニアでもこのような  
本の並べ方には抵抗があるだろう。

読書人の美意識から遠く離れていると思う。雨の水滴が本にしみていく様をたえられる人がいるであろうか。

店内はさすがに整理がよくいき届いていて、旧知の店員が店長にまで登りつめていて、こんなうれしいことはなかった。

もうここからは最低でも3時間勝負である。でもよく整理がいきとどいている分、値段が妥当すぎて面白みに欠ける、とでも言おうか。

図書館をめぐっているような気がしてくる。籠をもって、持ちきれないくらい買いこむぞと勇んでみたのだが、一向にバスケットは埋まらない。
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雑本を10冊ばかり入れて疲れたのでレジの近くへ戻り、腰をおろして、所在なさそうに左右に目を泳がせていると、なんと探していた『ラスキン全集』が目の前にあるではないか。

この全集はラスキンを崇拝する一学生が精魂を込めてつくりあげた全集で、今日でも「全集の範」として崇められている。

価格を見てみると1780ポンド。悪くない。こみ上げる想いを抑え、背をなぜていると、「すみません、1巻欠けているのです」

全39巻のところ、1巻が欠本である。天を仰ぐとはこのことか。無情の声が店内に響き、
すべてが崩れ落ちてきた。

ここまできて何たることだろう。あまりのわたしの落胆ぶりに、痛風の友人から「大丈夫か」と逆に慰められる始末であった。
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美本で価格も妥当で、やっとめぐり会えたのに…。古書との出会いを人生にたとえた人がいたが、まさに至言である。
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by oxford-N | 2008-11-29 05:29 | 古本

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ブース書店は在庫40万冊という触れ込みだが、実際にこれまで覗いてみた感じでは、雑然としていて、整理がいきとどいていなく、魅力に乏しい古書店であった。

それが今回は打って変わった様相を呈していた。まず整理されていてロンドンの古書屋とみまがうばかりに整然としていた。

これは見て回るのに時間をかける価値はあろうかと期待が膨らんできた。雑誌の棚をのぞくと、なんと製本された『パンチ』のみごとなコレクションが控えていた。
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小さい図書館をしのぐ在庫があるが、ざっと目を通したら、アラがやったら見えてきた。

まず数はあるのだが、どうも質がいまひとつであり、図書館からの払い下げ本が多いせいか、ラベル、印の跡が気になってしまう。

そしてこれはという本に出会ってもしっかり値つけがしてあり、ときにはロンドンより高めである。レジにいる担当者に率直にこうした疑問をきいてみた。

すると、当店は過渡期で、迷っているという。新システムにすべてを切り替えようとしているとか。

それでわかった。店全体の雑然さは消えたが、書棚の混乱がつづいている理由が。もう少し時間がたてば魅力ある古書店に変貌するだろう。

それでも3時間は粘り、精選した結果、セィンツベリィー批評選集全3巻とベロックの伝記を購入。締めて20ポンド。
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前者には「書評者の弁」という、30年以上、書評に携わった文人の楽屋話が収められている。これは楽しみだ。

今回の教訓は、グランドのように広大な古本屋は疲れるということ。グランドのような広さでも、その広さに苦痛を感じささず、「居心地のいいようにする」、これが古書店の理想ではないだろうか。   
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by oxford-N | 2008-11-28 05:29 | 古本

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痛風で顔をしかめている本人を強行軍させるわけにもいかず、重点的に3軒の古書店を回ろうかと内心では考えはじめていた。

車中で「痛風」の日本語の意味を説明すると、「その通り、やはりいたもに東西はないのだ」とえらくご満悦だった。

英語のgoutは、語源からして「かたまり」のような即物的な意味しかないが、日本語では「風が吹いただけでも痛い」という風流な命名になっていると自慢してやった。

すると英語にも、同じ発音で「味覚、趣味」という風雅な語があると対抗してきたではないか。足は激痛でいうことが効かない分、舌がよく回るらしい。

日本語、英語の優越論を応酬しあっているうちに車は、古書の村ヘイ・オン・ワイへたどり着いた。
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ある壁には柳原さん描く「サントリーおじさん」とそっくりのイラストがあった。

村はクリスマス一色である。何気なくのぞいたショーウインドーにトイレット・ペーパーの「クリスマス用」が飾ってあった。サンタさんがもよおしたときの非常用か?

ここまで徹底されるともう「どうぞ」という感じになってしまう。何はさておいても古書の国大統領のブースさんにご挨拶をと思い、古書城まで来て、意外なことをきいてしまった。
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あの有名な創立者である王様は、引退してもうここにはいないという。奥様が後を取り仕切っているとか。感慨ひとしおである。感無量だ。

世界中に名を知らしめ、古本による村おこしの教祖様と崇められた人が引退とは…。歳月人を俟たず、とはかくのごとし。

そうなると1軒目は、ブース書店へ足を向けるしかない。いざ、いかめやも。
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by oxford-N | 2008-11-27 03:34 | 古本
ヘレフォードの駅から車で飛ばして、たっぷり1時間はかかる。車で駅まで友人が迎えに来てくれることになっている。

この友人は、古本村に日参できるように、ふもとまで住居を移したうえに、古本業者の鑑札までもっている。

この水戸黄門のような印籠ならぬ、カードをみせると、たちまち10%から20%の値引きになる。まことに重宝である。

さすがに少額のとき、10ポンドくらいの時は遠慮するが、20ポンドが16ポンドになる値引き率は大きい。
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今回は2000ポンド近い全集ものを求めようと計画しているから、ついすがりたくなるというのも人情である。

2000ポンドが1600ポンドまで値下がりするのだから。それにしてもポンドの換算率が上下するのにはついていけない。

渡英した4月には250円近くであったのが、今は150円である。4月にこの全集を買っていれば、40万円であった。それが半年後に買えば、24万円である。16万円もの差がある。

だからこの友人は神様みたいな存在である。だが、その神様に異変が生じていた。駅に姿を現したが、脚をひきずっている。

顔を苦痛でゆがめているので、「もしかして痛風?」と顔をのぞきこむと、黙ってうなずいた。これでは1歩も動けない。

車の運転もつらそうである。ブレーキを踏めない時があると、物騒なことを平然とのたまわれる。

オイ、オイ、大丈夫か?

とにかく今日は1日休んで明日に期そうということになった。ここまできて何という事態に…。つい天を仰ぎたくなってしまった。

車中で、どの店から攻略しようかと、地図とにらめっこをして、古本村全店舗突破完遂作戦まで立てていたのだが、どうやら作戦変更の必要がありそうだ。
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by oxford-N | 2008-11-23 20:49 | 古本
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久しぶりに古本村ヘイー・オンワイへ行くことになり、今、ヘレフォード行きの列車に揺られている。2時間30分の旅である。

今朝のニュースで来春から6%から11%も列車運賃が値上げさせると発表されたが、ロンドンから走ってきたこの列車で、この乗客率ではいくら値上げしてもダメだろう。

週末とはいえ、さびしい限りである。通勤ではできるだけ電車を利用するように勧められており、駅前の駐車場に自家用車をおいて、列車利用する人も多い。

運賃が高くなり乗車を敬遠するようになる。その結果、間引き運転で効率が悪くなり、また乗車率が下がる、というように悪循環の繰り返しになる。

鉄道の未来はもう明るくならないのであろうか。

そんなとき後部座席に腰かけていた女性が検札官にとがめられている。定期をもっているのだが忘れたと主張している。そして現金は持っていない、と。

次の駅で下車するようにと指示されていた。乗客の方も車掌もなれ合いのような感じで、ここにも「問題」があると思った。

こうした無賃乗車が常態化しているということは、ゆゆしき事態と感じなければならないのに、そうした緊張感がまったく見られない。

運賃値上げのニュースとともに、マンチェスター市内乗り入れ車両に2ポンドの料金を課すというニュースが流れた。

鉄道、自動車ともに締め付けを食らうのは利用者である。どうも割に合わない、気がする。

そうこうしているうちにヘレフォードに列車は到着した。気持ちを切り替えて古本村へ向かおう。
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by oxford-N | 2008-11-23 19:58 | 古本
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Mさま、先日、お訊ねされていました「ムール貝のハーブ煮」のレシピーをここで伝授いたしましょう。手間いらずで寒い夜にはいいですよ。

まずムール貝ですが、1キロ3ポンドくらいでありますから、人数分を求められたらいいと思います。一人前700グラムというところでしょうか。

ムール貝は大きなマーケットに行くと、スコットランド産とオランダ産があります。最シーズンの夏は前者がいいのですが、秋、冬は粒が小さくよくありません。後者のオランダ産がはるかにすぐれています。

まず水洗いをして、不要物、汚れをきれくおとしておきます。この下準備はスープの味を左右しますので大切です。手抜きはここでは禁物です。

深めの胴長鍋を用意して、下準備を施したムール貝を移します。ハーブ類を適当にあるもので賄い、セロリ、玉ねぎを少量切り刻みいっしょに入れます。

ここからが最大のポイントなのですが、火力です。最初、貝が少し口を開きはじめるまで強火で一気にいきます。適宜、鍋を上下にゆらして火の伝導を均一にすることも忘れないでください。

水分は入れなくてもいいです。貝からうまみが出てきますので。白ワインを少々好みに応じて入れてもいいです。なくても十分いけます。さて蓋を閉じてください。

貝が蒸されて口を開け出したら急いで弱火にします。ここから貝からうま味があふれてきますので強火にしてはいけません。

貝が全開しているようでしたら出来上がりです。所要時間5分くらいでしょうか。10分は絶対にかかりません。火力が強いと貝が縮んでしまいますのでくれぐれも注意してください。

さあ、これで出来上がりです。写真のように、ムール貝が国民食になっているベルギーではこの鍋いっぱいで1人前です。蓋に食べた貝殻を積んでいくのも気持ちのいいものです。

よく冷えたビール、ワインがあればもう言うことはありませんね。フレンチ・フライは付け合わせでよく出てきます。スープとの相性が抜群です。

どうぞ、お召し上がりください!
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by oxford-N | 2008-11-20 00:27 | オックスフォード
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やがて冬を迎えるオックスフォード駅である。常々この国の鉄道運賃について不可解な気持ちを抱いていたが、それを通り越して、「謎」とさえ思えてきた。

先日の日曜日、パディントンとオッスフォード間を乗ったのだが、私は3日前に購入していたので6ポンドであった。友人は当日買い求めて18ポンド(!)も支払った。

明日、ハーフォードからヘイ・オン・ワイに行くので、オックスフォード駅で切符を購入したところ、往復で29ポンドであった。座席指定である。

指定料金は無料だが、2時間くらい列車に乗るであろうか、それにしてはなんだか、割高感がぬぐえない。

というのも先日ユーロスターでロンドンとブリュッセルまで走ったら22ポンドであった。新幹線が安くて、在来線の普通列車の方が高いことなどあるだろうか?

バーミンガムの駅では窓口売り場で購入した切符と、駅員が構内でさばいいている切符代金に1ポンドの差があった。これなど、どう解釈していいものやら、頭を傾げてしまう。

またピークオフなる時間帯を設け、午後4時から7時までの間、乗っていい列車と乗ってはいけない列車が生じてくる。

ラッシュアワー緩和を狙うが、当然料金も異なってくる。でも、その便指定が何を基準にしているのやら、さっぱりわからない。

どの駅にも「運賃」についてのパンフレットが置いてあるが、こうした疑問は何度読んでも解決しそうにない。あげたらきりがないくらい矛盾にあふれている。

わが日本は英国から汽車を輸入したが、料金や運行システムを追従しないで本当によかった。

そうかと言って鉄道を捨て、渋滞でカタツムリのようにしか進まないバスに乗るわけにもいかず、忍耐の日々がつづいている。
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by oxford-N | 2008-11-18 22:02 | 古本
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岩波文庫の「断腸亭日乗」上下二巻が送られてきた。これはひとり暮らしのものにとってバイブルである。サバイバルの極意が書かれている。

そして孤独地獄に堕ちながらいろいろな試みがなされている。これで何度目の通読になるであろうか。同じようなところで同じような感慨を覚えてしまう。

今回、荷風がいくどとなく花卉に注意を払っているのが目についた。そして雨の描写にこれほどまで的確な素描はないだろうとも思えた。

文庫の印刷は、上巻よりも下巻のほうが2刷も多く重ねている。これはやはり戦争の叙述にたいする、読者の好みゆえであろうか。

読み方はいろいろあろうが、たとえば正月の箇所だけ追っていっても楽しい。見ず知らずの人から年賀状を差し向けられるわずらわしさを嘆く元日もあれば、統制により賀状廃止になり、寂しさを隠せない正月もある。

偏奇館の炎上は何度読んでも圧巻である。「三十余年前欧米にて購ひし詩集小説座右の書巻今や再びこれを手にすること能はざるを思へば愛惜の情如何ともなしがたし」と焼けていく蔵書を嘆く。

わたしも震災で同じ思いをしたからこの個所はとても他人事とは思えない。表紙もちぎれて積みあげられた蔵書のうえに、大粒の雨が降ってきて、本にこびりついた汚れの上に水泡をつくっていく様がありありとよみがえってくる。

「命のあらん限り」書き連ねてきた日記は、読むものを離さない。岩波の編集部がひねり出した「後をひく読後感」とは言いえて妙である。

今回さらに思ったことは、過ぎゆく「時」が実に見事に描かれているという点である。時の移ろいが、荷風にリリシズムを与えている。

部屋の前の大樹もことごとく葉を落とした。いよいよ冬がやってくる。「風寒きこと、厳冬の如く」とはならないで欲しい。
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by oxford-N | 2008-11-17 00:58 | 古本

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フランスから帰宅すると、馴染みの古書展から目録が届いていたので、開いてみると、『鏡の国のアリス』からのテニエル挿絵の銅板が出ている。

価格は3750ポンド。この古書店はこの銅板がどのように使われるのか知らないのでは、とこの値段を見て思った。きっと知らないのだろう。しかも真新しい。

木版を原版にして、電気製版をしてこの銅板ができあがる。何度も使用しているうちに磨滅してくるから、また電気製版で新しい銅版を制作する。

明らかにこの銅板はその時のものである。しかも時代はさほどえていないようだ。「古書市場に出ることは稀である」と注記しているが、そもそもそんなに価値はないものだ。
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おそらく何も知らない人が購入するだろうが、これは罪作りな話である。やはり古書店はきちんとした知識をもってほしい。

買った本人はテニエルの原画をえたような気持ちで有頂天になるだろが、すぐにまっさかさまに谷底へ落ちていくことになる。辛すぎる。50万円以上投資してこんな仕打ちはない。

古書店に一言注意すべきだろうか、それともそんな行為は営業妨害になるのだろうか。骨董の世界のこのあたりの呼吸がよく分からない。
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by oxford-N | 2008-11-15 23:50 | 古本